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アンドロイドボーイ[第25話]

 第25話『嘘』


 久遠 翔は山積みの段ボールに背中をぴたり張り付け、息を殺した。

 何度考えてみても、おかしい。
 一瞬両想いだと浮かれていたのは夢だったのか。

 両想いだと思っていた相手が超絶美少女に扮し、鉄パイプを引きずりながら久遠の命をつけ狙っているというのはどういうことだ。

 アンドロイドみゆゆとしてステージに立っていた事は大きな謎だが、そんなことよりも命を狙われる覚えはない。
 この途方もない行動。さすがあの二条院 学である。
 悪いことに相手はベストオブ凶器、鉄パイプを所持している。奴に最も持たせてはいけない物のひとつだ。




 あの瞬間。久遠はアクション映画さながらの機敏さで飛ぶようにして地面に転がり、頭上に振り落とされた鉄パイプを何とか避けきった。

 鉄パイプが直撃した段ボールには深く穴が開き、中から発泡スチロールの粒が粉雪のように飛び出し舞った。
 一見幻想的な光景ではあった。

 何とか体勢を立て直した久遠の目の前。短いスカートはためかせて、すたりと飛び降りてきたのは例の少女だ。
 逆光で表情が読み取れないままアンドロイドみゆゆーーの姿をした二条院 学はバッターボックスに入ったバッターのごとく、無言で鉄パイプを構えた。
 そして久遠に向け、迷いのないフルスイングを放った。

 久遠は仰反り、勢いよく背中から倒れて、またしても鉄パイプから逃れた。
 びゆんと重厚感のある風が頬をかすめる。
 すぐさま立ち上がりバランスを崩しながら、目の前に立ちはだかる段ボールの森に身を隠したのだ。




 追跡者の目前でここへ逃げ込んだのだから、当然向こうには久遠の居場所が分かっている。長く逃げ果せるはずもない。

 鉄パイプを引きずる殺人的な音が、冷たいコンクリートの上をゆっくりと這う。
 それはやがて息を殺して凍り付く久遠の傍らまで近付いてきて、止まった。

 万事休すである。

「お、お前。学……なのか?」

 斜め後ろに感じる気配に堪りかねて久遠はうわ言のように呟いた。
 すると不気味なほど静かな落ち着いた声が返ってきた。
 懐かしい二条院 学の声だ。

「言ったはずだ。俺の秘密を知ってただで済むと思うな」

「どういうつもりなんだよ、お前……そんな格好して」

 すると相手は激高した。
「お前の方こそどういうつもりだっ! 人の妹の部屋に勝手に上がり込みやがって! この変態野郎!」

 女装した男にだけは言われたくない言葉だったが、妹をもつ兄として怒る気持ちはよくわかる。

「そっ、それは……まあ、心配かけたのは悪かった。でも断じて、妊娠させるようなことは、してないからーー 」

「貴様ッ! 妊娠させなきゃ何してもいいって言ってるんじゃないんだぞ!」

「いやそういう意味じゃっ……! 確かに告白はされたけど……ちゃんと理由を話して断った。だから美優ちゃんには指一本触れてない」

「よくも妹を振っておいて、俺の前にのこのこと出てこられたなお前」
 二条院は吐き捨てるように言った。

 久遠は思い切って振り返り、二条院の前に歩み出た。

 街灯の薄明かりに照らされたアンドロイドみゆゆーー二条院は、腕を組んで怒り心頭と言わんばかりにこちらを睨み付けている。

 だが殺気立った感はない。
 こうして間近で見ると、可愛い少女がぷんぷんと腕を組んで怒っている健気な様子にしか見えない。鉄パイプはご愛嬌としておこう。
 到底男には見えず、もちろん少女の顔は存分に好みのタイプである。というよりは、よくよく眺めてみれば俺様メガネがメガネを外して化粧をしただけの顔だったので、久遠は何故だか安心した。

 それにしても違和感無く、よく出来ている。
 これは男にモテるだろう。
 怒っている顔や仕草も実にそそる。
 何よりも、その正体があの二条院 学であるところが良い。

「ホントに、お前がアンドロイドみゆゆ、なのか? 何でだよ……みゆゆは憧れのアイドルじゃなかったのかよ……」

 久遠が我にかえって聞くと二条院は押し黙ったままだ。
「美優ちゃんがすごく心配してた……お前がそんな事してるって知ったらーー」

「美優が? まさか。これは元々、美優が始めた事だ」

「美優ちゃんが?」

「ああ。最初は曲作りの練習だったみたいだけど、今はまあアイドルプロデュースの練習ってところか……」

「お前は妹のために、そんな格好で歌って踊ってるのか?」

「そうだ。悪いか? 俺は妹のためなら何でもするし、何でも出来る。それに俺は次期生徒会長を継ぐ男だ」
 二条院は堂々と言い放った。

 確かに現生徒会長の特技は女装である。学園祭のステージで踊る度に、悩殺されて叶わぬ恋に身を投じる男共が続出するのは事実だが、その恒例行事を継ぐ事が生徒会を継ぐ事になるのかは甚だ疑問だ。
 あれはただのラノベの読み過ぎだと、久遠は思っている。

「曲作りの練習って……。でも美優ちゃんはそんな事、一言も……」

「美優は上手いからな、嘘をつくのが」

 そう鼻で笑うのをじっと眺めてから「お前にそっくりだな」と久遠が静かに言うと、二条院はムッとした表情で眼を細めた。

「じゃあ美優ちゃんが言ってた、あれも嘘なのか? お前が俺のこと……本当は、好きって……」

 二条院は一瞬驚いたようだったが、何も言わずに顔をしかめて久遠から眼をそらした。

「さっきステージで言ってた、恋におちた相手って……俺なのか?」

「その質問に答える気はない」

「おいっ、逃げるなよ! ちゃんと答えろ!」

 久遠が叫ぶと、二条院はふいに持っていた鉄パイプにもう片方の手を掛けた。

「うるさい! 大人しく殴られて、さっさと俺のことは全部忘れろ!!」

 鉄パイプがガリリッとコンクリートを削る。




【後書き】 ね、眠い。眠すぎる。
あとちょっとで完結~♪と思ってたら、どうも心も文章も気が抜けてしまって……遅くなりました(-_-;)
おのれ……待ってたぜ、という方。もしいたら申し訳ないですm(__)mすみません。

おやすみなさい。
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コメント

Re: けいったん様

けいったん様♪
いつもありがとうございます♪♪
承認遅くなってすみません(>_<)

この前の雨で確かにちょっと涼しくなりましたね~!
あ、私も大阪なんですよ~♪♪
今年はいつまで夏なのかと心配しておりましたが……(;_;)
やっとヒンヤリしてきた!!と思ったら、同時に冷え性も元気に復活しております(--;)
手足から始まり、もう肩から首からぱんぱんで、吐き気もする。今まだ授乳期なので、姿勢のせいか肩こりが酷くて……ちょっと寒くなっただけで肩こり劇的に悪化しました……。

あ、季節と私の体調はおいといて(^_^;)
教授!!私も実にそうおもいます!!
鉄パイプで殴ると記憶も消えるけど、本人もこの世から消えてしまうのでは!?
まあそういうところが二条院のすごいところでもあり、私の設定のむちゃなところでもあります(笑)
良い子は絶対まねしないように!!

また長くなっちゃった。もう後書きだな……けいったん様ごめんなさい(TT)
あ、後書きついでに♪ここだけの話、次回は冒頭に【注】の注意書きを入れる予定♪♪ふふふ……(*^^*)
間違っても【残酷な描写がありますのでーー】の方じゃありません。今回の主人公は死にませんのでご安心を(笑)

またお待ちしてます\(^o^)/
ありがとうございました♪♪

いま

No title

実に おもしろい!
しかるに 二条院くんは、久遠の記憶から 自分を消し去りたいんだね。
しかし いくら そうだとしてもだ、その 鉄パイプは 如何なものか?
記憶ウンヌンの前に 彼は この世から 消えてしまうのではなかろうか…
それも 確実な方法かもしれないが…
いや! その案を肯定しているのでは無いぞ!
まぁまぁ 少し落ち着いて もっと良い方法は無いか 一緒に 考えてみようではないか!
と、
突如 何所からともなく現れた 某教授が 頭の中がゴチャゴチャな二条院を諭し始めましたが、
どうなるのでしょうね♪(笑)

さて 久遠くん、二条院の話しを信じるか、妹の美優の話しを信じるか…
君は どちらを 選ぶのかな?
、σ(ー”ー)フム‥考ぇ㊥…...byebye☆

私の住んでる大阪は、蒸してます!暑いです!夏です!
我慢して エアコンオフで過ごしていますが、アセモが出来ました(´;д;`)
予報では 今晩の雨で 涼しくなるらしいのですが、本当かな~┃ドア┃_ー) 疑いの目

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