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アンドロイドボーイ[第24話]

第24話『再会』


どうしようかと考えるより先に身体は動き出していた。

入ってきたドアから暗い廊下へ戻り、元来た道を駆け抜ける。

音響担当に足止めをくらった場所から舞台袖へ入り、控え室を目指す。
練習やライブで何度も訪れている場所なので迷うことは無い。
舞台裏では関係者がお疲れ様でしたと声を掛け合い、早くも機材を運び出す準備が始まっていた。

控え室が並ぶ明るい廊下に走り出てとっさに辺りを見回すと、探していた人物が思いの外近くに突立っていた。

何かを発しようと口を開けたが言葉が出ない。

観客に最後の別れを告げて表舞台から降りたアンドロイドみゆゆなる少女は、スポットライトが消えてもなお異質な輝きを失わず、久遠の数メートル先だけがアニメの一場面のようであった。

マネージャーと思われる若い男が近くに寄り添っている。心配そうな表情で少女の肩に手をやり、僅かに乱れた栗色のストレートをそっと撫でた。
撫でられた当の本人は、泣いて赤くなった眼から下をタオルで押さえてうつ向き、じっとしている。

姿を目の前にすると、これがクラスで独裁をふるう悪名高き俺様メガネだとは改めて信じがたい。

そもそも男かどうかも怪しいと久遠は思い始めた。
一貫した極悪非道、わがままな暴れん坊ぶり。あれがどうやったら目の前の悲しみに暮れる美しい生き物になるのか。

しかしーー。
行き交うスタッフを避けながら、久遠は少女の足首を繁々と見つめた。

「ぅおっ! やっぱりお前かあ!」

突然背後で大きな声があがる。

その瞬間、こちらを向いた少女と眼が合った。

濡れた大きな瞳が更に大きくなり、顔面の半分以上がタオルに隠れているに、血の気が引いたと分かった。

「なあ、久遠!」
そう言って、息をのむ久遠の肩を後ろからつかんだ者がある。
力任せに半回転させられると目の前に立っていたのは、ずいぶん世話になったこのライブハウスの主である。

「お、おやっさん……」

「信じてたぞー! 絶対帰ってくるってな」

「ど、どうも、お久しぶりです」
とって付けた挨拶をしていたら、後ろで「あっ!」という男の声がした。

振り返ると少女の姿が消えている。
声をあげたのは、あのマネージャーらしき男だ。

逃げられたと分かり、久遠は目の前の人の良さそうな笑顔に「また来ます!」とだけ言って少女の後を追った。

関係者の驚いた顔をたどって廊下を走る。
控え室とトイレを過ぎ、非常階段に入った。

頭上を駆け上がる小さな靴音。
それを追って一階まで上がると靴音が急に消えた。
一階から外に逃げたのかもしれないと外に通ずる出入口に近付いたが、いやまてと考え直して非常階段に戻った。

息をひそめて手すりから顔を出し上を見上げた途端、また階段を駆け上がる靴音が再開された。
階段の手すりに巻き付く白い指が逃げて行く。

靴音は二階の廊下にまたしても消えた。
倉庫なのか事務所なのか、ビル二階の部屋は全て暗く、無人であった。誰かが消し忘れた程度に廊下の電気が所々ついている。

久遠が立ち止まり、耳を澄ませて行くべき方向を見極めようとしていると、ガラガラガラッと豪快に窓の開く音がした。
音がした方に回り込んで暗がりに眼を凝らす。
すると突き当たりの窓に人影が動いた。

「あっ! おいッッ!」

久遠が止めるのも聞かずに、その人影は窓枠に足をかけて次の瞬間ひらりといなくなった。

慌てて走り窓から身を乗り出す。
下の駐車場を駆けていくのは少女の後ろ姿だ。

後先考えない大胆不敵な行動。
間違い。あれは二条院だと、久遠は今やっと確信した。

とはいえ、そのまま後を追って窓から飛ぶ勢いは無い。
窓から真下を覗くと花壇や駐輪場や何か他にもいろいろとあるようだが、とにかく建物の影になっていて街頭の光が届かず真っ暗闇である。
こんな着地点も見えない場所にあえて飛び降りようとするのは勇気とは言わないと早々に判断し、久遠は非常階段で一階まで下りて外に出た。

冷たい空気を切りながら先程二条院が降り立った駐車場に回る。
駐輪場に入り、もし自転車なんぞで逃げられていては追い付きようもないと途方に暮れかけたが、よく考えてみれば二条院は自転車に乗れない。

ふいに遠くで物音がしたような気がして久遠はまた駆け出した。
ビルの裏側に回り込む。
大型車が停まる搬入口を通り抜けると、小さなコンテナや台車に積まれた無数の段ボールが立ち並び迷路のようになっていた。

「学ーー?」

ためしに呼び掛けてみるが当然返事は無く、しんとしている。

コンクリートを歩く自分の足音だけが響く。

歩き回っては立ち止まり、耳を澄ませる。

フェンスの向こう側を車が通り、青白いヘッドライトが周囲を眩しく照らしたので久遠は眼を細めた。

一瞬目の前の壁に写し出された影に、久遠は絶句した。

背後に積まれた段ボールの影。
その上に繋がって伸びていたのは、両腕を上げた人間の影だった。

まるで鉄パイプを振り上げた少女の影のようにも、見えなくはない。




【後書き】
なんともう10月!?
週末更新の予定が大幅に遅れてしまいましたm(__)m

季節の変わり目ってなんでこんなに忙しいのか……家族は順番に風邪ひくしねー。私だけ風邪ひかないのはなに? 嫌がらせ?
その上、ちょっと涼しくなったからか、生理前だからか、布団に入るとオヤスミ3秒な日々……。
もっと有意義な秋の日々を過ごしたい(TT)
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テーマ : 自作BL連載小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント

Re: けいったん様

く……『太陽にほえろ』だったかorz
絶対ルパン三世のテーマ曲だと思ったのに……けいったん様スマン(T-T)
だってあれもチャが多いからさ(笑)

ここからが肝心の二人♪どうなるんでしょうな~(^_^;)
あと3~4回で完結?予定。
第30話近くになっちゃいますね…これでよく短編のつもりって言ったよね……すげーな私(-_-)
だって最初は展開の数だけ数えたら十回くらいで終わるかな~って思ったんだもん(T_T)
怖い怖い……これが噂のスマホの落とし穴ってやつ?(←スマホのせいにした)

こんなんですが、またお待ちしてまーす\(^o^)/

No title

t『チャチャチャァ~♪ チャチャチャチャァ~♪ チャチャチャァ~♪チャチャチャ・チャァ~チャァ~♪』
… 途中放棄、ギブです!あまりの チャチャの多さに!…(・_・)o尸~~マイリマシタ

これは 何のテーマ曲ですかって?
16様ったら~もう~分かっているくせに~(ノ~ё~)ノ ん~~いけずぅ~♪
えっ、本当に 分からないの~~(冷汗)

逃げる二条院と どこまでも追い掛ける久遠
↑ この場面では 思い出すのは やはり …( `ロ´)<<<<☀←太陽にほえろ!ですよ~(笑)
Σ(o゚ω゚o)ハッ 知らないなんて 言わないでね(泣)

さぁ そろそろ 久遠も追いついた様だし、ここから肝心!!
二条院が 何をしても 何を言っても 頑張りなさいね♪

まさか 此処で あの屋上の様な サプライズは無いよねーアセアセ(;≧ー≦)...byebye☆

16様、コメ欄で 遊んで ごめんなさい(o*。_。)oペコリ

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