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アンドロイドボーイ[第22話]

第22話『アンドロイドみゆゆ』


 久遠は廊下の奥に駆け出した。

 突き当たりにある『STAFF ONLY』と書かれた大きなドアを力任せに開くと、ちょうどドアの方に走って来た顔見知りの音響担当と眼が合った。

「あれ、あんた辞めたんじゃなかったの?」

「ああ……あの、もうアンコール始まった?」
 久遠が聞くと、音響の女は怪訝な顔で「え? まだだけど?」と言った。

「今日はドラム裏にあるから練習なら明日にしてよ。もー忙しいんだから! 邪魔!」

 久遠は入ってきたドアの横に伸びる、細い通路に向かった。
 暗い通路に並ぶドアを数え、三つ目のドアノブに手をかける。

 僅かな隙間から身体を中に滑り込ませると、ちょうど会場の中程にある関係者用の出入口だ。
 どうもドアが重たいと思っていたらドアの向こう側は人でぎゅうぎゅうに溢れかえっていた。

 脳天に痛いみゆゆコールの渦中に飛び込み、真っ暗な会場内で見えもしない肩や背中に押しつぶされそうになりながら、身体半分をドアに押し付けて久遠はじっとその時を待った。

 未だに信じ難い。
 実をいうと、まだ信じてはいない。
 あのペラペラのポスター1枚に託すには、あまりにも驚愕な真実であった。

 ガチャンッ。

 ステージ上に一筋のスポットライトが降り注いだ。

 みゆゆコールが消える。

 白い光の中に人影が一つ。
 それは顔を下に向け、右手を高くかざしている少女であった。

「いッくぞぉォォッッ!!!!」

 少女の叫び声。
「うおぉぉォォ!!」という雄叫びのような歓声と共にステージに光が甦る。

 テクノ調の伴奏が大音量で鳴り響くと、電子機器が起動した時のように目映い蛍光がポンポンと点滅して、ステージ上は近未来を思わせる装置と光で埋め尽くされた。

 中央でバックダンサー二人を従えて踊りだしたのは、まさしく超絶美少女であった。

 グレーのワンピースから伸びるしなやかな手足、シャンプーのCMのように流れるストレートの髪、玩具の人形のような顔。
 胸には勲章のような物をいくつか付けていて、そのせいか気品ある高校の制服のようにも見えるし、軍服のようにも、量産されたアンドロイドのようにも見える。

 二次元のアニメ世界から抜け出してきたと思われる少女が、激しいリズムに合わせて白い太股で短いプリーツをはね上げる。
 想像していたよりもずっと激しい本格的なダンスだった。

 小さな顔を眼で追う。
 信じられない。
 今ステージで踊っているあの眩しい顔と身体と、キスをして抱き合っていたというのは。

 だから、少女の足首に近未来のアンドロイドには似つかわしくない貧相なアンクレットらしき物を見つけた時には、久遠は「あっ……」と声を発した。

 やっぱりあれはーー。

 二条院の言っていた事は本当だった。
 みゆゆはため息をつかない。悪口を言ったりしない。
 トイレに行かない。牛丼を食べない。
 クラスの女子のように、学校一のモテ男を好きになったりはしない。

 みゆゆは普通の女の子ではない。

 なぜなら、普段は二条院 学として姿を変え、この世には存在していないから。

 人の手によって作り出された非の打ち所が無い完成形。
 それが超絶美少女アンドロイド みゆゆだ。

 エフェクターを通したロボットの声音で歌う。

 ーーもう一度ドキドキさせてあげちゃう
 アンドロイド キス
 とびきりのスリルで

 甘い秘密にはまるがいい
 機械仕掛けのハートを見くびるからよ
 あなたのキスで目覚めさせて
 本物の身体 本当の恋 ーー

 隣で激しく揺れ動く巨体を見上げると、大学生くらいの大男がいつか二条院の部屋で見たようなピンクのうちわを大きく振って怒鳴るような声で一緒に歌っていた。

 ステージの光源に照らされた会場内は巨大な生き物のように不気味にうごめいている。その表面を無数のペンライトの光が海ほたるのように浮遊していた。
 観客の大半は男がだが、スーツ姿の女性や女子高生もちらほら見受けられる。
 皆半狂乱で汗を飛ばし我を忘れてアンドロイドの世界にのめり込んでいる。

 光の中のアンドロイドは高らかに笑い、正面に指をさした。

『狙った獲物は逃がさない!
 既にお前のハートは私のものだ!!』

 あの時もそうだった。

 橙色が射し込む教室の黒板の前。
 名前も覚えていない縁の薄いクラスメイトが、笑えないほど恥ずかしい台詞を叫び踊っていた。

 見なかった振りをしてもよかったのだがーー思えばあの時から既に自分はこのアンドロイドの秘密に溺れ、魅了されていたのだろう。

 曲が終わり大歓声が鳴り止まぬ中、電源が落ちたようにステージは暗転し、またスポットライトだけになった。

「皆さん、今日は来てくれてありがとう」

 それは機械仕掛けの音声ではなく、生身の声だった。
 加工などはしなくても、少女のようでもあり少年のようでもあり、充分謎めいている。

 隣の男が「みゆゆが、しゃべった……」と感嘆して声をもらした。一度静まりかえった会場もざわついた。

「今日は私から、大切なお話が、あります」

 絞りだされた静かな声は、語尾が微かに震えていた。
 聞きなれた余韻にふらりとする。

 アンドロイドは瞳を閉じた。
 そして覚悟を決めたように、一息目を吸い込んだ。




【後書き】
この投稿、本当は半分くらいに削って、次話分を足して一話にして明日の夜更新予定でしたが、もういいやf(^_^;
拍手やコメントを読んでたら嬉しくて早くアップしたくなる書き手のさが。
ということで、おやすみなさいなさいませm(__)m
次話は週明けか……短かったら今週中。

(拍手秘コメ k様♪ なろうサイトからお越し頂きありがとうございます♪嬉しいコメント感謝です♪ 秘コメは返信欄が無いのでこちらに失礼!またよろしければお寄り下さ~い(^o^)/
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テーマ : 自作BL連載小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント

Re: C様♪

C様~いつもありがとうございます♪

そうですね(笑) 二条院は歴とした男の子だと断言しておきましょう!! ここにきて実はBLじゃなかったという驚きの展開もなかなかのものですが、それだと一気に書く気が失せてしまうのです……何故に(^^;
書いた事はありませんが、私が書く男女の恋愛小説ほどつまらないものは無いような気がします(笑)
女という生き物を嫌というほど知っているだけに、冷めちゃって書いてて萌えないのだな(;_;)それに自分みたいな女が主人公になってしまうとなると、こんな粗暴で適当な主人公の小説はいやだ! どうやっても恋愛小説にはならん。

前回に引き続き、なんだかんだと小説家みたいな事を言っとりますが、私の場合ただ妄想を綴っているだけですので、そんな尊敬には値しませんよー(>_<)恐れ多いことでございますm(__)m
大概にしないとちゃんとした小説家さんに怒られそうで怖いわ(*_*)

こんな所ですがまたお待ちしとりますよ~\(^-^)/


Re: けいったん様♪

けいったん様~コメントありがとうございます♪♪

やっとこさ登場のみゆゆでございますf(^^;
さて謎の多い彼女(彼)は自らの声で何を語るのでありましょうか……!?って、私絶対自分の小説の宣伝とか、あらすじ紹介とか出来ないわ(T-T) だってラストまであらすじ知ってるし……。人をドキドキさせるのって難しい(*_*)

今夜はいざよいの月☆昨日の十五夜も綺麗な月でしたが、今晩も格別ですなぁ♪♪

またお待ちしてます\(^o^)/

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No title

ステージの上で 歌い踊る超絶美少女アンドロイドみゆゆ
それは、全てが 現実で 全てが 幻の世界…

酔いしれる客たちの間で その姿を見詰める久遠が抱くは、どんな思い?

アンドロイドの姿を捨て 生声披露をした みゆゆ=学は、何を思って 何を話すのでしょうか!?ワクワク♪((O(〃⌒∇⌒〃)O))♪ドキドキ

『狙った獲物は逃がさない!既に お前のハートは 私のものだ!』
|(◎`・ω・´)σ ズキューン!-----→( ̄ * )ポッ♪...byebye☆

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