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アンドロイドボーイ[第20話]

第20話『秘密』


「あ……えっと……、ごめん。俺、好きな奴いて……」

久遠が言うと、大きな瞳がぎゅんと潤んで悲しそうに下を向いた。

「ーーって言っても、俺も振られたんだそいつに、先週。
でも、なんていうか……まだ忘れられなくて。ごめん、ホントに……」

美優ははっと顔を上げた。

「それって、もしかして……お兄ちゃんですか?」

「いっ……! え、な……なんで?」

突如放たれた豪速球を受け止める余裕があるはずもなく、久遠は隠すことなく動揺した。

「あの……この間、お兄ちゃんと一緒にここまで帰って来たことあったでしょ? その時、なんか……すごく仲良さそうだったから……。
あ、覗き見してた訳じゃなくって! たまたま、そこの窓から……。ごめんなさい」

まさか見られていたとは。
手を繋ぎ、気が済むまで抱きしめ、更に思う存分キスをした。
見られてはまずい事を一通りしたと記憶する。

「いや、あ、あれは……そういうことじゃ」と久遠が苦しい言い訳を考えていると、美優は突拍子も無いことを口にした。

「お兄ちゃんは久遠さんの事、好きだと思います。友達とかじゃなくって……恋愛対象として……」

「え? いや……、そりゃないだろ。たぶん 」

「お兄ちゃん、久遠さんのドラムの大ファンなんです!
私がファンになったのは、お兄ちゃんがライブに連れて行ってくれたのが切っ掛けなんです。だから久遠さんがバンド抜けた時、お兄ちゃんホント落ち込んで……。もちろん私とか親には隠してたけど」

「二条院が? マジ……?」

「やっぱり隠してたんだ……。
久遠さんがこの家に遊びに来るずっと前から、お兄ちゃんは久遠さんの事、好きで好きで仕方なかったんだと思う。毎晩ライブの動画ばっかり見て……眠れないくらいに」
美優は物思い気に語り、ふっと悲しそうに微笑んだ。

「嫌な女ですよね、私。お兄ちゃんの気持ち知ってて、久遠さんに告白するなんて」

「いや、なんか信じられない……。つーか、だってあいつ今は口もきいてくれないし」
久遠が言うと、「あの人は、そういう人だから」と少女は長いまつ毛を伏せた。

「そういう人なんです、お兄ちゃんは。
絶対に本当の自分を出さない。いくらでも自分を犠牲にして、ホントの気持ちを押し殺して、沢山の嘘の中に自分を隠してしまう」

大きなため息をついて、美優は話し始めた。

「うちの親って結構厳しくて、私が音楽科にいきたいって言った時、大反対だったんです。もう私自身も諦めてたくらいで。
だから急に音楽科目指してもいいって言われた時は凄くびっくりして……素直に嬉しかったけど。
でもずっと不思議だった。お兄ちゃんが受験直前で志望校変えたのは何でだろって……。中学入った時からずっと目指してた高校があったのに、急に興味が無くなったって言い出したから……。
お兄ちゃんが裏でパパやママや親戚に頭下げて、私が音楽科にいけるように必死に頼み込んでくれてたなんて……後で噂で聞いて。きっと私のために、お兄ちゃんは夢を一つ諦めたんだと思う」

「二条院が頭下げるなんて、確かにちょっと想像つかないな」

「お兄ちゃんがあんな風になったのは、私のせいなんです」美優は言葉を詰まらせた。

「私、ずっと好きだった幼馴染みの男の子がいたんです。中学入ってすぐくらいに、その子に大切な話があるって呼び出されたから、告白されるんじゃないかってドキドキして行ったら、その子お兄ちゃんの事が好きになっちゃったって……どうしようって……。私もう訳分かんなくて。だってお兄ちゃんは男だし、その幼馴染みの子だって男の子なのに。
それで私、お兄ちゃんは何も悪くないのに、お兄ちゃんにあたっちゃって……一年くらい口もきかなかった。今は、仲良しだけど」
美優は両膝を立てて顔をうずめた。

「あの事があって、お兄ちゃんはあんまり感情出さなくなってしまったから……全部私のせい……。
あれでも昔はよく笑う、イタズラが大好きな可愛い男の子だったんですよ?」
今でもイタズラは大好きである。
僅かに微笑みの戻った美優を見て、久遠は少し安心した。

「だから、無表情なお兄ちゃん見てると悲しくなるんです。あれは私が作り出してしまった、作り物のお兄ちゃんなんだって……」

美優は顔を上げ、凛とした表情で久遠を見据えた。

「お兄ちゃんは絶対久遠さんの事が好きだと思う。
直接口から聞いた訳じゃないけど……分かるの。だって、私はお兄ちゃんの妹だから」

「……どうだろな。あいつ、俺には好きとか、そんなの全然匂わせないけど……」

すると「まったく!」と美優は腕組みをして「 ホント上手いんだよなぁ、嘘つくのが。あのメガネ」と怒った顔をした。それから笑った。

美優が壁時計を見上げたので久遠もつられて見上げる。
もうこんな時間かと思って窓を見ると、確かに日はしっかりと暮れている。

「もう、ライブ終わっちゃう……」と美優が言った。

「アンドロイドのアイドルだなんて……お兄ちゃんどこまで作り物の世界に溺れる気なんだろ」

そして最後にポツリと「みゆゆなんて……ホントにいるのかな」と少女は呟いた。

久遠はもう一度時計を見上げた。
それから思い立ったように膝に手をついて立ち上がる。

「ごめんっ美優ちゃん! ちょっと俺行くわ!」

美優は「うん」と言って、今までで一番魅力的な笑顔をした。

玄関先まで送ってくれた美優に「曲作り頑張って」と声をかけると、美優は深く頷き「お兄ちゃんが与えてくれた夢だから」と微笑んだ。

駅に向かって駆けながら、二条院にメッセージを打つ。

『話がある。逃げても無駄だ』




【後書き】
悩みに悩み抜いた挙げ句、残り千文字程度を次話に切り分けました(汗)
もう書き上がってるのでいつでもいいんですが……明日更新だと、 週明け二話いっぺんに読まなくちゃいけない人が出てくるのだろうか…? という程人が来てるのかって話でもありますが(^-^; どうしたものか。

それにしても会話だけで話を進める事の大変さよ。
御手上げです。
とりあえず寝よう!
おやすみなさいませm(__)m
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コメント

Re: A様

わーA様♪コメありがとうございます!

ちょっと微妙なこの二人……気に入ってもらえると嬉しいです(^.^)

コメントも頂き、勢いに乗って先程次話をアップしてしまいましたー!!
そしてこんな展開に……自分でも、もう少しなんかあるだろって思うんですが。
んん……どうなんだろう……と思っても、もう更新してしまった。

相変わらずこんなんですが、またお寄り下さいませ~(>_<)
ありがとうございました♪♪

Re: C様

C様ー♪♪
コメントありがとうございます!

そしていつも優しいお心遣い……乾いた心に染み入ります(;_;)
コメレスは楽しみの一つでもありますので、さっきまで眠くても何だか嬉しくて眼が覚めます♪
数える程のコメレスですのでご心配には及びません。
とは言えこんな私ですので、やっぱりコメレス出来なかったり遅れたりする事も多々あるでしょう。その時はどうか笑って許して欲しい(照)

先程、次話をアップしました!
感謝をこめて翌日アップに踏み切った!
C様。当初の予想が的中でございましたー(^q^)

あ、『おちょきん』は『ちょこんと行儀良く座っている』です♪
たぶんです! 違っていたらすみません。
猫が餌の皿の前で座って待っている様子。もう『おちょきん』以外では言い表しようが無い!
どこかの方言なんでしょうが、もうこの言葉でしか言い表せない!って時がよくあるんです!

またお待ちしています♪♪
C様もどうか御無理なさらずー(^_^)/

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