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アンドロイドボーイ[第16話]

第16話『遊びの夕暮れ』

 屋上へと通ずるドアのノブを強く握り、久遠 翔は白い息を吐ききった。

 そして自分に言い聞かせた。少々の事では動じるな、と。

 屋上が血の海になっている。ウサギの着ぐるみが鎮座している。真っ白な煙幕。繰り返される狙撃。手すりに施された細工。容赦無く飛んでくるロケット花火。
 そして、あの笑顔。
 全てを帳消しにするあの魔性の微笑みに、呆気なく屈し目の前の欲望に貪りついてしまう自分を呪う。

 二条院 学と付き合う以上、これら全ての事は日常であると心得えなければいけない。
 どんな正論をもってしても戦況が変わることは無く、それがこの人間離れした恋人のすごいところである。

 恋人ごっこを始めてから無闇に寿命を縮めること、はや二週間が過ぎようとしている。

 依然として繰り返される恋人からの理不尽な悪行と、甘い雰囲気を察知するかのように鳴り響く生徒会からの呼び出しに耐え抜き、それでも何とか際どい関係を保っていた。




 勢い良くドアを開けて屋上を見渡すと、驚いた事に目の前で二条院が壁に持たれて座り込んでいる。

 これまでで一番不気味だ。

 ここ二回は相手が飛び道具を使用してきた事もあり、久遠は背後を気にしながら挙動不審な動きで二条院の所へ歩み寄った。

 そして念入りに蝋人形では無いことを確認してから隣に腰を下ろす。

 二条院が難しい顔で覗き込んでいるのは演劇部の台本のようだ。

「相変わらず、忙しそうだな」
 久遠がぼそりと言うと、二条院は深いため息をついて台本を投げ出した。
 そして項垂(うなだ)れるようにして久遠の肩に頭を置いた。

「もう俺は駄目だ。台詞が全然入ってこない」

「なんだよそれ。そんなに忙しいのか? 生徒会長が倒れたくらいで」

「あの腐れ変態会長が一人であんな仕事をこなしていたとは……やっぱりアイツは人間じゃないな。熊かなんかだ」

 宇宙人同然の恋人に人間では無いと言わしめた悪名高き生徒会長が風邪に倒れて以来、生徒会内部は収集がつかない事態に陥っているらしい。

「どうして俺は生徒会なんかに入ったんだ」

 久遠の二の腕に顔をすり寄せて嘆く二条院の頭を撫で撫でしながら、久遠は笑った。

 こんな風に弱音を吐く俺様メガネを誰が想像出来るだろう。
 そうか、ついに俺はここまできたかと、久遠は自分を誉め称えた。

「そういや、告られたんだって?」

「あぁ……うん」
 昼休みに耳にした噂の真相を聞くと、二条院は恥ずかしそうに認めた。
 同じクラスのもう一人の学級委員、出席簿の久遠の欄に豪快な二重線を引いたというあの女子が、二条院に告白したという。

「あのメガネ女子がねぇ、意外だな」

「俺も驚いた。女子って外見からは想像出来ないくらい積極的なんだな」

「……んで、どうすんだよ」

「どうするって?」

「だから、返事だよ。付き合うのか?」

「付き合う訳無いだろ!」
 そう言って俺様メガネは怒った。

「何で? お似合いなのに」

「何でって、他に好きな人がいるのに、付き合える訳無いじゃないか」

「……好きな人、って?」
 久遠が聞くと、二条院は耳まで真っ赤に染めて口を尖らせた。一度、潤んだ大きな瞳をこちらに向けたが、すぐに下を向いて呟いた。

「そんなの……みゆゆに決まってるだろ。……っ、何だよ!」

「いや別に。何かちょっと期待した」

「は?」

「みゆゆか、そりゃそうだな。……もうすぐライブだしな」

 二条院が嬉しそうに頷(うなず)くのを見て、久遠は諦めに似た決心を抱いた。少し困ったように微笑んで、溜め息をつく。

「じゃあ、台本覚えるの終わったら起こしてくれ」
 そう言って二条院の腕を持ち上げ、細い両膝に頭を乗せて冷たいコンクリートの上に寝転がる。

「キスでな」と付け加えると、二条院は「うん、わかった」と照れながら言った。

 久遠の顔近くで台本をめくる指先を捕まえ唇をあてると、驚くほど冷たい。

 顔を横に向けて少年の足首に覗くアンクレットを眺める。
 アンクレットとは名ばかりで、麻紐とトンボ玉で組まれた地味なミサンガだ。
我ながらもう少し洒落た物をプレゼントすればよかったと思う。

 どんな願いをこめて結んだのかは聞くまでも無いが、学年唯一の生徒会役員の俺様メガネに、こんな形で校則を破らせた自分の功績はどれ程だろうと考える。二条院 学の中に、小さいながらも爪痕を残せただろうか。

 せめて、このミサンガに込められた二条院の願いが叶うといいと思う。
 アイドルとの恋愛成就という壮大な願い。それも相手はアンドロイドというから手強い。

 つくり物の世界で人ならぬ者と恋に落ちても、それはごっこ遊びでしかない。そんな恋が上手くいくとはーーいやそれは自分の事か。

 オレンジ色の夕日が切り取っていく期間限定に眼を背けるように、久遠は瞼を閉じた。




【後書き】
うわーもうお迎えの時間だ(*_*)
遅くなりましたm(__)m
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コメント

Re: けいったん様

どもですー\(^^)/
毎度ありがとうございますm(__)m執筆の励みになっとります♪♪

終わりましたねぇ夏休み(-.-)
うちも盆休みの疲れを引きずって未だシャキーンとはなりませんな…。
息子も同じなのか、先週いっぱいは夏風邪に倒れとりました(^^;

あ、お話の方。ラブラブ(?)な二人は見納めのような……(爆)
また徐々に文章が長くなってるので気をつけねば(>_<)
本当は8月中に完結させる予定でしたが、お盆を計算に入れてなかった。私のばか……。

なんかこちらの方が後書きみたいになってしまいました(笑)
ついでに次話予定はーー今週中若しくは週明け☆

けいったん様ありがとうございましたー\(^o^)/
長文御免m(__)m

No title

エ━━━(;゚д゚)━━━・・
血の海、着ぐるみウサギの首ポロリ、から 奇妙奇天烈な「仮」恋人のお出迎え歓迎式は まだ続いてたんだ!
それにも メゲズに 二条院に会うのを止めない(←止められない?) 久遠の健気さ♪
恋って ほんと 人を盲目にさせちゃうからね(笑)

みゆゆしか 恋愛対象としか見ていない学、
みゆゆ以外 まだ恋は未経験な学
そんな学に久遠は 自分の価値+存在を知らしめる事が、果たして出来るのでしょうか?

久遠を見直す 何か切欠が、あれば…
ひとつ 事件でも ブッコミ、そして 颯爽と久遠が現れ 学を救う…
16様、ベタ中のベタ 王道中の王道でも イットキマスカァーーー!!Σ(;。`゜ω゜。)お゙----ッ

夏休みは、子供と同様に グータラ生活(←ダンナが 6時出勤の後の 二度寝とか(笑))を送っていた私
二学期が始まって さすがに二度寝はしてないけど、まだ グータラ精神を引き摺って (。+・`ω・´)シャキィーン☆とは戻りません
心も体も ユルユル~に弛みっぱなしなので いい加減に 引き締めないと…
ャバイョ━━━<(ll゚◇゚ll)>━━━!!...byebye☆

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