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アンドロイドボーイ[第10話]

 
第10話『ドキドキ』


「悪かったな。妹がいろいろと……」

 二条院はぼそりと言ってから、そっとその場にしゃがみ込んで両手を伸ばし、絨毯の上を探り始めた。

 久遠がさりげなくベッドの下に隠していたメガネに、二条院の指先が触れるのを見ながら、舌打ちしたい衝動を抑え、「いや、別に」と 気の無い返事をした。

 メガネを見つけた二条院は、一度メガネをかけて、また外す。

「お前にあんな可愛い妹がいるとはな。いくつ?」

「高1……ひとつ下だ」

「うちの高校じゃないんだろ?」

「1時間くらいかけて、音楽科がある高校に通ってる」
 二条院はレンズを拭くのをやめて、メガネをかけ直した。

「音楽科か、本格的なんだな」

「あ、これ美優の連絡先」
 携帯の画面を久遠に向けた。

 携帯を受け取り、自分の携帯に美優の連絡先を登録してから「後でメールしとく」と二条院に携帯を返す。

「あんなに可愛いとモテるだろ? 彼氏とかいんの?」

「さあ、多分いないと思う。……好きな奴はいるみたいだけど」

「俺だったりして」

「さあな」
 久遠が茶化すと、二条院は携帯をのぞき込みながら、素っ気ない返事をした。

「どうする? 俺と美優ちゃんが付き合い始めたら」

「どうもしない。俺には関係ないから」
 揺るぎない無関心。
 久遠は天井を仰ぎ見た。

「ま、そんなもんだよな妹って。
 俺も妹いてさ、更に双子なんだよ。一人でもうるさいのに、二人もいるとマジでダルいよ。
 朝から洗面台独占するし、風呂はそれぞれ一時間ずつ入るし。すぐウザいとか邪魔とか、わめいて蹴ってくるしな」

「きっと蹴りたくなるんだよ。お前の顔見てるとさ」

 やっと携帯の画面から顔を上げたと思ったらこれだ。

 先程抱き合った、甘くて熱いあれはなんだったのだろう。
 悪いのはそれかーーと、久遠は二条院の鋭く光るメガネレンズを睨んだ。

「お前さあ、コンタクトにしろよ」

「は?」

「絶対、コンタクトの方がいいって」

「嫌だよ」

「あ、さては目に入れるのが怖いんだろ? 大丈夫だって、俺も実はコンタクトなんだ」

「じゃあ、なおさら嫌だ」

「言っとくけど、眼鏡野郎はモテないからな、女子に。ってか、みゆゆに」

「お前、さっきからちょくちょく癇(かん)に障るな」
 俺様メガネはダルそうに言ってから、端によけてあったガラスの器を手に取った。

「だって現に俺の方が、恋愛の経験値は上だし。お前経験値ゼロだろ? レベル0じゃん? あ、さっき俺と初キスしたからレベル1か」

「おい、あれは初キスじゃない! 練習なんだから、キスにカウントしないだろ。
 だいたい俺の初キスの相手は、みゆゆって決まってる」
 そう言いながら、二条院がまたサバイバルナイフに手を伸ばしたので、久遠は胸騒ぎを覚えながらベッドの端に肘をついた。

「勝手に決めんなよ。みゆゆもレベル1の奴とキスしたくねえよ」

「いいんだよ、みゆゆだって絶対初キスなんだから」
 大した思い込みだ。

 唇を尖らせた二条院は、久遠が注視する前で、堂々とガラスの器の中の崩れたリンゴにナイフを突き刺した。

 まさかとは思っていたが、信じたく無かった。
 食うかね、普通ーー。

 久遠は肘をついたまま手の甲を口元にあて、眉をひそめた。

「あのさあ……二条院。お前、自分が何でモテないか気付いてる?」

 真剣に聞くと、ナイフに刺さった血まみれのリンゴをかじる二条院は「は?」と怪訝そうに首をひねった。

 果汁がしたたる、ぷっくりとした唇が、旨(うま)そうなことに変わりは無いのだか。

「だよなぁ、気付いてたらこうなってねえもんなあ。自分の欠点とかさ、あんだろ? いっぱい」

 すると俺様メガネは、口元に手をやりしばらく考え込んだ。

「……自転車に、乗れないとか?」
 いろいろ通り越して、感心する。

「地味に引くな、それ。
 じゃあ、それ入れて24個だ」

「24個?」

「自転車に乗れないのを含めて24個ある、お前がモテない理由がな。俺は、今日お前と会ってから、既に24個も見つけてる」

「……嘘だ。俺に欠点が20個もあるはずがない」

「おい、勝手に四捨五入すんな。1個増やすぞ」

「学年で唯一、生徒会役員を務めるこの俺に、約15個もモテない理由があるとは。にわかには信じ難いな……」
 レンズの向こうの眼を細めて、こちらを睨みながら、リンゴを完食した。

「今、口頭であげましょうか? 26個」

「おい、ズルいぞ! 勝手に2個も増やすな!」
 ガキかーー。

「べつにお前がモテようとモテなかろうと、みゆゆに嫌われようと。関係ないからな、俺には」

 久遠が笑うと、二条院は動きを止めた。
「そこまで言うならーー」

 静かに言って向き直り、顎を上げて久遠を見下す。
 そして光るナイフを久遠の顔の前に突きだし、冷ややかに言った。

「そこまで言うなら、教えてもらおうじゃないか。そのモテる秘訣とやらを」

 プライドなのか、今日一日で出来た免疫なのか、久遠はナイフを向けられても動じなかった。
 首筋に冷や汗がふき出すのを感じたが、ベッドの縁に両腕をたらして二条院を挑発的に睨み返した。

「教えるったって、1つ2つ教えたところでなぁ。だいたい口で言って分かる事でもーー」

「ほう、上等じゃないか。なら実戦で教てみろよ」

 久遠はニヤリと笑った。
「実戦って……一応俺ら男同士なんすけど」

「望むところだ。相手が男なら恋人にカウントされないからな。あくまで練習だ」

「実戦ってことは……なに、恋人ごっこみたいな感じでいいわけ?」

「そうだな、まあそんなところか。俺を彼女だと思って、自然に接してくれればいい。女子がホレるポイントを、こちらで勝手に習得するからお構いなく」

「自然に、ねえ……」
 その理屈と発想は、久遠には一生理解できないだろう。

「逃げるのか?」
 サバイバルナイフがけしかける様に首元で揺れ動いたので、久遠は冷笑して両手を軽く上げた。

「いや、受けて立つ……ってことで。どうせこっちも暇だしな」

「せいぜい、その財布に入っている校則違反物品に恥じぬ恋愛を教えろよ」

 ナイフがゆらゆらと指した絨毯の上には、久遠の財布が転がっている。
 絆創膏を出すときに一緒に飛び出た千円札と、ちらりとのぞく避妊具をナイフで指差し、二条院は鼻で笑って続けた。

「期限は、そうだな……どちからに恋人が出来るまでって事でどうだ?」

「なら急がなきゃな。これでも彼女切らした事はないんで」

「もし期限内に俺がモテる秘訣を習得出来なければ、複雑骨折と全身打撲の多重苦の末、地獄の底で血へどを吐くことになる」

「モテないだけで、なんでお前はそんな災難に合うんだよ……」

「俺じゃなくて、翔(しょう)、お前がだ」

「俺かよ。激痛とか出血系は勘弁して欲しいんスけど」
 そう言いながらも、下の名前で呼ばれて喜んでいる自分が情けない。

「無理だな。俺が握っているお前の弱味は、屋上で気を失ってる恥ずかしい写真くらいしかないからな。血が出る方に訴えるしかない」

「お前、そんな写真持ってんの?」

「よし、じゃあ明日から俺とお前は晴れて恋人同士だ」

「あ、その前に1つ」と、久遠は顔の横で手を上げた。

「俺もお前のこと、下の名前で呼んでい? 学(まなぶ)だっけ……」

「もちろん。恋人同士になるんだから、余計な気づかいは迷惑なだけだ」

 久遠は、ふうと息を吐いた。
 どういう訳か最高の展開に傾いたが、喜びよりも安堵の方が大きい。

「よし、じゃあ学。恋人同士になるなら、とりあえず、そのナイフ、置いてくれ」

 いつの間にか日が暮れている。
 久し振りに感じる疲労感。

 良くも悪くもドキドキしっぱなしの日。
 今夜はよく眠れるだろうと、久遠は思った。




【後書き】
今日は時間があるので、久々にコメレスを♪♪
もうずっと、これがしたくてウズウズしてたんですが(^^)
コメレス出来ませんと宣言しておきながら、それでもいいですよーってコメや拍手頂けて、もう感動(T_T)
本当に執筆の力を頂いております!!ありがとうございますm(__)m

感想はもちろんですが、読者様の日常の話なんかに楽しませてもらってます♪♪

最近はスマホで新着コメ通知を受けれて、スマホから返信出来るんだから便利になったもんですな。少し前はパソコン開くだけで時間くってたのに。

では簡単ですが↓↓

★けいったん様★
いつも本当にありがとうございます♪♪

おぅ!お洗濯お疲れ様です!ラグ、きれいになりましたでしょか??
もうすっかり虫の季節……年々、虫こなーずとかコバエほいほいが効かなくなってる気がするのは私だけ?

本編の方は相変わらず、R指定からは遠いところをダラダラしてます(^^;
やっと良い雰囲気の内容を書いたと思ったら、今日はまた俺様メガネに戻ってるし。
拙い作品ですが、引き続きお付き合い頂けますと幸いですm(__)m


★C様★
いつも温かなコメントありがとうございます♪♪
そして、さすが! するどい!!……とだけ言わせて下さい(笑)

もちろん今も授乳しながら、これ書いとりますよー♪♪
管理職系の顔した男子なので、心なしか、執筆してる時は「君。どういうつもりかね」と険しい表情をしていらっしゃる(^^;

BL専門じゃない方にも楽しんで頂けるなんて光栄ですし、頂くコメントも大変興味深く拝見しております♪♪

少しでも読者様の現実逃避に貢献できますように\(^_^)/

ではm(__)m
あ、次回は今週中!短くなる予定です☆


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コメント

Re: C様

思いがけずスマホからのコメレスが快適だったので、今も両隣に息子達を寝かせて打ってます♪♪
さっき上の子が大声で『キャベツ!!』って寝言を発したので、超ビックリ(*_*)
旦那に似たのか、寝言の多い息子達です。

って、何の報告よ……スミマセン。

コメントありがとうございます♪♪
もうコメレスありがとうございますなんて読者様に言わせてしまうなんて、どうなの私!……恐縮ですm(__)m

10話に引き続き11話も、なんか血なまぐさくなってしまいましたが(--;)
お察しの通り、このまま完結にはなりませんのでご安心をm(__)m


Re: けいったん様☆

いえいえ、こちらこそ毎回ありがとうございます♪
毎度、本当にやる気を頂いておりますよー!

ふふ……俺様メガネが、俺様でもメガネでも無くなる日、果たしてやってくるのでしょうか(・・;)
ホントにどっちが先に堕ちるんだろねー(^^)
これでも、早く完結させる事を目指しているので、そのうちすぐにわかると思います♪

この二人、全然良い雰囲気にならないので(自分のせいだけど)、裏で転じて吉の濃厚ラブシーンを書こうか悩んでたり(笑)

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No title

晴れて恋人同士ねー…
σ(・ω・*)んと…二条院くん。
アンタ、久遠の策に まんまと乗せられているの 気づいている?

.∵・(゚Д゚)   ーt(´  ) フッ
えっ、忠告する私にも ナイフを向ける気気なの!!
本当の事を言ってるだけなのに…

俺様眼鏡の君が、俺様でも眼鏡でもなくなる日を 楽しみしているよ~~!

あっそれから 久遠も!
自分が仕掛けた策に ハマらないようにね♪

どちらが 先に 本気(マジ)になるのかなぁ~
アノコカナ?((o(・∀・*o)(o*・∀・)o))コノコカナ?...byebye☆

16様、御多忙の中 コメントの返事をありがとう(人Ω-)謝謝(-Ω人)謝謝

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