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転じて吉[第十三話]

【注】前回投稿より一年半ほど期間があいていますので、読みづらい点、辻褄が合わない点など多々あるかと思いますので、お許し下さい。
今更ですが、BL(ボーイズラブ)作品となりますので、ご理解頂けない方はご遠慮願います。



『後ろの少年』


「……なんか。夢みたい、だよね……」

 独り言なのか、問いかけなのか。
 背後で一人、うつつをぬかすに幼なじみに、貴崎祐はわざと気の無い振りをした。
 
 風呂あがりの熱は冷めたが、慣れ親しんだ石鹸とは違うボディソープの香りにまだ身体を包み込まれている。

確かに成宮冬馬の言うとおり。
 いまだに現実味は、無い。
 一度はこの世の者で無くなったための後遺症か、それとも数ヵ月前までは吐き気がするほど忌み嫌っていた幼なじみと同じベッドにいるからか。
 どちらもだろうと貴崎は思った。
 
 少し考えてから、夢であってたまるかとテレビ画面をにらみ付ける。

 まるで絵にでも描いたかのよう、爽やかで格好良くて、勉強もスポーツも万能、誰にでも優しくてクラスのみんなに好かれる、なんとも目障りな奴。
 自分だけはそう簡単に好いてやるものかと嫌悪していた事が嘘のように、今や性別を越えて恋人という形に収まったのだから、夢よりも現実の方が現実離れしていると言える。
 
 この状況に至る長い道のり、どれだけの勇気と恥ずかしさを汗に替え注ぎ込んできたか。貴崎は思い出したくもない。
 
「ね、思わない? こうして二人で、一緒に寝てるなんてさ」

 少しだけ寂し気な声に、貴崎は枕の端をぎゅっと握った。

「……別に。昔はよく一緒に寝てただろ」
 ぼそりと言う。

「ああ、まあ……うん。ずっと昔は、ね。子供の頃だろ?」

「今だって子供じゃないか」と口を尖らせると、冬馬は笑った。

「祐は、ね」




 長い間に出来てしまった二人の距離が、ひやりと背後をよぎった。会話はまた途切れる。

 ほの暗い部屋の中で、眩し過ぎる画面に照らされている。
 出来過ぎた話で、貴崎がずっと前から見たかったアニメの映画版DVDを、たまたま冬馬がレンタルしていた――らしい。

 ただ残念な事に、今はそのアニメのストーリーが全く頭に入ってこず、結果、貴崎はただ目ばゆく動く画面を眺めている。
 海賊王になりたいらしい主人公の魅力を、ひとつ残らず吸い付くす貪欲な何かが、この部屋には充満している。

 それにしても。
 ずっと貴崎祐の意識を奪っているのは、耳の後ろをかすめる、甘く柔らかな呼吸だ。
 
「祐、寒い?」

 背後からの声に、貴崎は小さく首を振った。

 後ろから回ってきた手が、掛け布団を肩まで持ち上げ、そのままごく自然を装って、貴崎の二の腕を伝い、するりと手の甲に重なった。

 冬馬が用意してくれた真新しいパジャマの肌触りを感じる度に、ドライヤーで髪を乾かしてもらった時の、着せ替え人形にでもなったかのような変な気分を思い出す。
襟をなぞり、一番上のボタンを丁寧にとめた長く端正なつくりの指先を思うだけで、どうにも不思議な気分になった。

 今までに着たことのない――と言っても、今までは兄のお下がりか、着なくなった体育のジャージで寝ていたわけだが――こんなにかしこまったパジャマは初めてで、どうも落ち着かない。
 冬馬は「とてもよく似合うよ」と言っていたが、たぶん家では照れ臭くて着れない事を、貴崎は既に確信している。
 
 



 映画も終盤に差し掛かかろうというのに、ちっとも気持ちは盛り上がらず、それどころか一抹の不安さえ感じ始めた。

 確かに焦りはある。
 貴崎には知識も経験もない。

 長い時間をかけて、大幅なズレを生じているであろう、精神的、肉体的な成長と感覚。

 深い亀裂となったそのズレは、そう易々と埋められるものなのか。
 そもそも、どうすれば埋められるのか。

 今晩、これから起こるであろう事を思い描いてはみるが、煙のように輪郭を残さずに、あっさりと消えてしまう。
 頭ではわかっているようでいても、それは以前に出くわした――今となってはまさに夢の中での話同然――信憑性のない体験と、 ネットで調べた危ういサイトの禁止用語の羅列でしかない。

早い話が、さっき冬馬が言い放った通り、貴崎祐はまだ子供なのだ。




 背後からやんわりと貴崎を抱きしめている冬馬は、といえば、おそらくだが全くテレビ画面を見ていない。
 なぜなら痛いくらいに、うなじに視線を感じるし、先程から暇を持て余すように貴崎の後ろ髪に頬を寄せたりしているのを、貴崎は敏感に感じとっていた。
 
 映画が終わるのをうずうずと待っているのだろう。

 もしも吸血鬼に背後をとられた場合は、きっとこんな気持ちだろうと貴崎は思った。
 無防備な首筋をさらし、いつ食い込むかもわからない鋭い牙を想像しては生唾を飲み下す。
 この緊張感を耐え抜くくらいなら、いっそひと思いにやってくれとさえ思う。

「……冬馬?」

「なに?」

「テレビ、見てないだろ」

「……どうして?」

「だって……、俺のことばっか見てんじゃん」

 すると後ろの吸血鬼は少し黙りこくってから、「……だめ?」と悪びれた様子もなく、ぬけぬけと全てを認めた。

 映画が始まる前は、俺もずっと見たかったんだよねと言っていたはずだが、その潔さに貴崎は少しばかり戸惑った。

「べ、つに……。別に、駄目じゃない、けど……」

 貴崎がそう言うと、では遠慮無くとでも言うように、後ろから回っていた腕が巻き付いてきて、きつく抱きしめられてしまった。
 少しパーマがかった柔らかな髪が耳の後ろにふわりと触れ、意識が揺れる。

 ふいに冬馬の熱い唇が、首筋の薄い肌に吸い付いたので、何の準備も出来ていない敏感な身体が思わず声をあげそうなほど萎縮した。

 衿元に指をかけ、貴崎の神経を弄ぶように口付けを繰り返し、熱い息を吹き掛ける。
 途中ちくりと強く吸われると、我慢していた吐息が口元から漏れていく。

 すると吸血鬼はにやりと笑うのだ。
 嫌でも気配でそうだと感じる。

「祐は昔から苦手だよねぇ、首」

 何か言葉を返そうとするが、くすぐったさと脳裏が痺れる感覚とで言葉が出ない。
 それどころか口を開けば、何かものすごく恥ずかしい音程がこぼれそうになる。

「覚えてる? 小学生の頃、夏祭りで祐が浴衣着たことあっただろ? 
 あの時、俺が浴衣の襟を直そうとして首に触れたら、そしたら……。そしたら祐、すごく可愛い声出してさ……。
すごく、すごく可愛いくって……」

 うっとりとした甘い声音で、嬉しそうに囁く。

「それで俺……、その日の夜に我慢出来なくなって、初めて一人で――――。

その時ね、祐のいやらしい姿、いっぱい想像したんだよ」

 驚きの告白に貴崎の視線が宙をさまよっていると、またたっぷりと首筋への愛撫が始まる。
 布一枚隔てた冬馬の指先が、徐々に貴崎の身体を締め付けるように這う。

「肌、直接触ってもいい?」

 水気をたっぷりと含む、くぐもった声に返事をする間もなく、パジャマの裾からすらりとした指先が潜り込んできた。

 冬馬の指が、貴崎の肌の感触と反応をひとつひとつを覚え込むようにゆっくりと脇腹から這い上がってくる。

 貴崎は今さらながらに怯えた。
 怖くなった。

 最後の抵抗をするかのように枕に頬を埋め、焦点の定まらない視線をテレビ画面に向けた途端、手首を強く引かれ、突然視界がぐるりと大きく回った。

 薄暗い部屋の中で仰向けにされると、上から覆いかぶさるように両手を付き、こちらを見下ろす冬馬の顔がある。
 影になって表情はよく見えない。

 ただ、既に身体の変化に付いて行くのがやっとな貴崎に対し、呼吸ひとつ乱さず、何も言わない冷静な口元を、また少し怖いと感じた。




「祐……」

 さっきまでとは違う、絞り出したような消え入る声に貴崎は、はっとした。

「許して、くれ、る……?」

 何を――。
 何を許せばいいのだろう。
 今までの事なのか、それとも今から起こる事をなのか。

 救いを求めるような、弱々しくて怯えた途切れ途切れの言葉は、ずっと昔、二人の気持ちが離れる前の、幼いままの少年のもののように思えた。

 ずっと――、待っていてくれたのだ。
 どうにも胸が苦しくなるのと同時に、愛しくてたまらなくなった。

 貴崎は自分でも気付かないうちに、小さく微笑んでいた。

 すると冬馬は感嘆のような溜め息をひとつ吐き、頬を寄せて言った。

「やっぱり――」

 聞き取れない言葉を残して、冬馬の唇が貴崎の唇に重なる。

 つい先程パジャマのボタンをとめてくれたはずの指が、今度はボタンをひとつひとつ丁寧に外していく。

 肩があらわになると、冬馬はまるで宝石に触れるかのようにゆっくりと指先を這わせ、頬をあてて貴崎の肌をしばらく見つめていた。

 いよいよどうしていいか分からなくなった貴崎は、うろたえて下唇を噛んだ。
 貴崎の肩に唇を押し当て始めた冬馬の吐息が、充分熱くなっている事に気が付き、その思いが増す。

 冬馬は、貴崎の太股に当たる下半身が既に欲情しているのを隠そうともせず、没頭しているようだった。

 どうやら知らないうちに話は上手くまとまったようで、室内が暗転した思った時には、テレビ画面にエンドロールが流れていた。
 それと同じ速さで、二人の関係が動き出す。
 
 熱いものが身体の下半分に注ぎ込んでいくのを感じながら、貴崎はぎゅっと眼をつむり、逆らえない流れに身を投じた。



【後書】
お久しぶりです……って、気がつけば前回投稿から一年半も経っている……。
お久しぶり過ぎて、もう読んでる人もいないのでしょうな(^_^;)
これは完全な「私的妄想置き場」となったな……。
まあそれも気楽で良しとしよう!

いやいや、よくない!
とりあえず、長くこの連載を読んでいて下さった方々、本当に申し訳ありませんでした。
もうこの声が届くことは無いのかもしれませんが、連載されることを待ってくれていた方の期待を思うと、本当に申し訳ないの一言です。

とにかく楽しみに待ってくれていた方達への謝罪の気持ちと、それから一年半たった今でも、ブログやこちらのページに足を運んで下さり、コメントや拍手を下さった方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

どういう形であれ完結はさせる!という最後のプライドがあったので、終了させるつもりは無かったのですが、気がつけば一年半も経っておりました。

近況の方は……、執筆をしなかった言い訳になってしまうのですが、ずっと頑張っていた不妊(とまではいきませんが)治療と、二度の流産を乗り越え、今めでたく二人目の子を膝で寝かせております♪♪
去年の初めに妊娠し、過去の経験もあって、不安続きのマタニティ生活で執筆も滞り、やっと帝王切開で産んでから半年。妊娠する前の体調にも少し戻り、書いてみようかな…とはじめてみた訳です。

今回の内容自体は書きかけのままずっと手元にあったものなのですが、もう久しぶり過ぎて、恥ずかしくて恥ずかしくて、ひと通り目を通すのに一週間程かかり、更に設定や、書き方などもすっかり忘れて……もうえらい事でした。

でもこの一年半の間にスマホに変えた事もあり、ちょっと執筆しやすい環境にはなったかな。
子供二人を寝かせて、自分も眠りにつくまでの僅かな時間を利用して、数日に一回執筆していますので、正直次回はいつ!という断言は出来ません。

また、頂いた感想や拍手コメントに対する感謝の気持ちは、執筆に反映させ、少しでも連載間隔の短縮に努めさせて頂きたいと想います。なので、大変失礼なのは承知の上で、今後コメレスがあまり無い事をお許し下さい。
ただ、頂いたコメントや感想は絶対にチェックして、とてもとても執筆の力になっております。
今回の投稿も、一年半こんな作者のためにエールを送り続けて下さった方々のおかげだと、本当に感謝しています。もう、コメントもらって嬉しくない作者なんてどこにもいないんです!

と、ここまで言っといて、もう読んでる人もそういないから安心しろと自分にいいたい(笑)

では!
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テーマ : 自作BL連載小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント

また読めてほんとに嬉しいです…!!

ほんっとに大好きな話だったので、続きが読みたくて読みたくて……(;_;)

ほんとに嬉しい!!!
ありがとうございます。

No title

読んでいますよ~! ちょくちょく、しつこいぐらいサイトに立ち寄っていましたから! 
二人の甘々な次回を妄想してはニヤニヤしています・・・//
続きが気になってしかたありません><

わ~~~い!

きゃあ、夢じゃなかろうか!
16さんが帰ってらした^^
それも、待望の2児の母になって。
これはもう、最高です。待っててよかった~~。
二人目は、男の子かな、女の子かな^^
いやあ、良かったです。

続きも、ほっこりしながら読ませてもらいました(ドキドキしろっちゅうに)
これから、育児も大変だと思うけど、またのんびりと書いていってくださいね。

読んでますよ!
たびたび通っていたかいがありました、嬉しいです!

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