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転じて吉 [第七話]

『吉のその先』


「付き合ってるって、成宮君が?」

「ああ」

「貴崎君と?」

「そうだよ」

 顔の隣で余りにもうるさいので、本当のことを教えてやると、シノはさも疑わしいという表情をした。

「それ、嘘でしょ」
 嘘じゃないよと平然と言い、祐の後ろ姿をチラ見しながら教科書を片付ける。

 シノは目を細めてまた片肘をついた。
「それって、あれじゃない? 思い込みっていうのかな……。アイドルの熱狂的なファンとかがさ、テレビを通して自分に語りかけてくれてるって勘違いするやつ。絶対、そうだよ。間違いない……。きっと片思いが長すぎたんだね。ちゃんと病院行って、治療した方がいいと思うよ」

「そんな訳ないだろ。祐の方から付き合ってもいいって言い出したんだ」
 それを聞いたシノが顔を青くして、神妙な様子で声を潜める。
「何、したの……?」
「何って?」
「恐喝? 言っとくけど、拉致監禁も立派な犯罪だからね?」

「ほんと失礼な奴だな、シノは。俺が祐にそんなことする訳ないだろ」と強く言ってみたものの、そうせずに済んだのは、祐がぎりぎりのところで成宮の想いに気が付いてくれたからだ。

「どうだかっ。成宮くんはニコニコしながら人殺しするタイプだからなぁ。ずっと貴崎くんに嫌われてたんじゃないの? どうして? 」

 どうしてと問われると答えが見つからない。
 そもそも長年の片思いが、何のきっかけで両想いへ夢の変貌を遂げたのか、これは成宮にとっても最大の謎だ。

 そうやって無駄話をしている間にも、祐に近付く影は入れ代わり立ち代りに濃くなっていく。

 女子二人がやっと離れていったと思ったら、次は男だ。
 徳野というクラスメイトで、教室の中では一番図体がでかく、所属する柔道部の大会では何度か表彰台に上がっていると聞いた。
 ついこの間までは祐と犬猿の仲だったはずだが、どういう訳か最近急に祐に近づき始め親しそうにしている。
 祐の隣の机に腰をかけて、話し始めた。

 危険だ――。

 楽しそうに喋っている祐の表情を落ち着かない気持ちで眺め、成宮は溜め息を吐く。
 祐のことを可愛いと、からかい半分に近づく女子共はいいとして、ああいう輩は危険だ。
 祐に危機感が足りないこともあるが、もし何かあった時に力ずくだと祐に勝ち目はない。

「あの二人、最近仲いいね。知ってる? 仲直りしたらしいよ。」
「仲直り?」
「ほら、年末に喧嘩したでしょ? えっと、何日だっけ。貴崎くんが徳野くんの机蹴って、そのまま帰っちゃってさ……覚えてない? あ、成宮君見てないんだっけ……。その時の事を貴崎君が謝りに行ったらしいよ。なんか小学生みたいだよね。あれ先週の金曜だったかな。放課後の部活中に徳野君を呼び出したから、ちょっと噂になってたんだよね……。知らないの? 恋人同士なのに」

 祐からはそんな事はひとつも聞いていない。
 成宮が返す言葉につまっていると、シノがニタニタとする。

「そのうち貴崎君、襲われちゃったりしてね。徳野君に」

 冗談言えと、けらけら笑うシノを睨みつけてから立ち上がろうと椅子をさげたところで、徳野の大きな手が祐の肩に馴れ馴れしく触れていると気がつき、動きを止めた。

「成宮くん? ねえってば……本性出ちゃってるよ? もぉ――」
 成宮の顔を間近で覗きこむと、シノは当然のことのように成宮の膝にちょこんと腰をかけた。

 どうやら祐と徳野は今週号の漫画の話で盛り上がっているらしい。
 少し子供っぽい性格が合うのか、徳野のさりげない接触を嫌がることもなく、祐は徳野の話に耳を傾けている。

「でもなんか、貴崎君と付き合うのって大変そう……。貴崎君ってさ、コウノトリが赤ちゃん運んで来るとかって、本気で信じてそうだもんねえ」

 悔しいながらも、その意見には同感だった。
 祐にとっての恋人同士、とは――手を繋いでキスをする事。そう定義付けられていたらどうしようというのが、ここ最近急浮上した成宮の悩みだ。
 これから先、キスの時以外は祐に触れられない日々――、きっといつか成宮には限界が訪れる。

「屋上で食う?」と徳野が祐を誘って立ち上がったので、成宮も慌てて立とうとする。が、膝には小悪魔がるんるん顔で腰をかけている。

 立ち上がった祐がこちらを振り向いたので成宮は余計に慌てた。
 すでに遠くの女子達が、シノを膝乗せしている成宮を見てきゃっきゃと黄色い声を上げている。

「おい退けよ、シノ。邪魔だ。野木に冷たくあしらわれたからって、俺に絡むな」
 邪険に言いながら教室内を見回すと、思った通り。シノの想い人である野木が他の女子とプリントを覗きこんで、何やら真剣に話し合っている。

「別に冷たくされて無いもん!」
 拗ねたように、頬をふくらます。
 こういうお子様なところが可愛らしいと女子には人気なのだろうが、生憎成宮にはその魅力が全く伝わってこない。
 祐と比べること自体おこがましいが、奥ゆかしさとか生まれ持った品の良さというものが皆無だ。

 祐がこちらを見ていることに気がついて、成宮は急いで立ち上がった。同時にシノが前のめりに転がりそうになる。

「祐――! 売店行こうよ」

 成宮が叫ぶと、徳野は「じゃあ先行ってるから、後で来いよ」と祐に言い、「飯行く?」と二三人に声をかけ連れ立って教室を出て行った。




「最近、徳野と仲いいんだね。仲直りしたんだって?」

 売店からの帰り、わざと人通りの少ない廊下を選んで祐に優しく問いかけると、祐は答え辛そうにしながら、首を縦に振った。

「最近急にみんなと喋るようになったから、クラスのみんな驚いてるよ」と軽く言ってみる。
 祐ははにかんで目を伏せた。

「恋人が嫌われ者じゃ、嫌だろ?」
 消え入る声を聞いて、成宮は足を止めた。
「祐……」 
 本当はこの場で抱き寄せて押し倒してしまいたいくらいに嬉しかったが、細い手首をつかんで引き寄せるだけで我慢した。

「ありがとう。でも、無理しちゃだめだよ」
 艶々した短い黒髪に触れようとしたが、人の話し声が廊下に響き始めたので、祐は成宮の手からするりと逃げてしまった。
 なかなか学校では触れさせてくれない。
 
「あのさ、冬馬……」

「なに?」

「冬馬、もうすぐ誕生日だろ?」
「あ……。そういえば、もう来週か。覚えててくれてたんだ」

 毎年つまらない誕生日を過ごしてきたせいか、すっかり忘れていた。 
 たいして好きでもない女から高額なプレゼントを貰っては、嘘でも喜んだ振りをしなければならないから、むしろ苦痛な思い出しかない。
 今までで最高の誕生日は一度きり。
 偶然日本での仕事が入り帰国した父と、元気だった祖父母、生前の母が作ってくれたテーブルに乗り切らない程沢山の手料理。家族全員で祝ってくれた最後の誕生日だ。
 もう二度と最高の誕生日は訪れないと、どこか諦めていた。

「何か、欲しいものとか、あるのか?」

「欲しいもの?」
 
 一番欲しいものは、既に成宮の手中にある――はずだ。
 だから、もはや欲しいものなど無いと格好良く言い切れたらよいのだが、そうでもないところが実に欲深い。

 そうだな――と首をひねって、一歩後ろを歩きながら祐の姿を上から下まで眺める。

 逆に、何ならくれるのだろうかと、こちらから聞きたい。

 成宮の今一番の望みは、もちろん祐ともっと親しくなること。
 具体的に言えば、手を繋いでキスするだけではなくて、その先だ。
 
 それが無理だというなら、明るい場所でひと目、裸を見せてくれるだけでもいい。
 触れるなと言われれば我慢はする。その代わり、いろんな角度から写真を撮りたい。
 明るいのが駄目なら、暗い場所で祐の身体に自由に触れられるというのもいい。
 きっとそんなことをしたら祐は狂おしいほど恥ずかしがるだろうが、それがまた我慢できないくらい可愛いのだろうと思う。  
 
 変なことはしないから、明るい場所で裸の写真を撮らせ欲しい。
 無理だろうな――。
 
「靴は?」
 祐が急に立ち止まって振り返ったので、成宮は我に変えった。

「冬馬、新しい靴が欲しいって、前言ってただろ? あんまり高いのは無理だけどさ」

「ああ、靴……。うん、靴ねぇ」 

 教室で聞いたシノの言葉を思い出す。
 コウノトリが赤ん坊を運んでくると信じていそうなタイプ――。

 きっと成宮の望みなんて祐には理解出来ないだろうから、気持ち悪がられて、嫌われるだけだろう。
 でもせめて祐と二人で写った写メくらいは望んでもいい気がする。

「また、考えとくよ……」
 
 にこりと笑って優しく言うと、祐は恥ずかしそうに目をそらした。

 突如、ポケットの中の携帯が不穏な音をたてて振動を始める。

 携帯と取り出し画面の表示を見て、成宮は眉をひそめた。 

 成宮の顔をじっと見上げた祐は「先に屋上行ってる」と沈んだ声で言い、廊下を歩いて行った。



 

【後書】こんにちは。16です(ωV_vω)ペコ
いつものごとく夕方になってしまいました。
ということで、いつものごとく今から洗濯物をたたんで、夕飯の準備をば(*´-д-)フゥ-3
職場のエアコンのせいか、昨日から鼻水と喉の痛みが止まらない。゚(゚´ω`゚)゚。ピー

お昼に大好物の辛ラーメンを食べながら執筆していて気がついたのですが、「こける」って関西の方言なのでしょうか?? (辛ラーメン関係なかった……)
分からない漢字や言葉をちょこちょこネットで調べるのですが、「こける」の意味に、京言葉という表示が……。
「走ってたら、つまづいてこけた」とか、関西以外の方には通じないんでしょうか……。

生まれも育ちも関西なので、方言だと気が付かずに使ってる言葉とか沢山あるんでしょうな(*´・д・)*´。_。)ゥミュ
小説の登場人物が「あれ? 今大阪弁使った?」ってこと、いくらでもあるような気がするんです。
まあ、それも含めて楽しんで頂ければと思います(←諦めた)。
ではでは♪♪
  

 
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コメント

C様お返事♪

C様♪いつもありがとうございます♪♪

あ、まとめ読みして頂いたんですね~ありがとうございます(人'▽`)☆
もう時間が空いた時に遊びにいらしてくれたら、大歓迎でございますよ!!

登場を喜んでもらえて、さぞかし嬉しがっております、シノ♪
シノと成宮はどこか似たもの同士なのか、こんな会話に……。

お察しの通り、成宮の変態振りは書いてて何故か楽しいです(@´゚艸`)ウフウフ どうなんだ……この作者。
これからも事あるごとに、たっぷり成宮の変態振りを執筆していきたいと思いますΣ(・ω・ノ)ノえっ!

あ、C様関西の方なのですね~♪♪
そうか~。東京出身のお母様は「こける」普通に使われるのですね~!
確かに、TVでもよく聞く気がするんですよね(。´゚ェ゚)。´_ _)ゥン
方言って難しいけど、面白いですね♪ 全国に広まった京ことばも沢山あるようですし。

今年の暑さは何なんでしょうね~、実はまだ梅雨明けしていないという事実……。
どうなるんだ、日本。
C様も、お体ご自愛下さいね~!!

またお待ちしていますね♪♪
ありがとうございましたヴァ──ヾ(´ー`)ノ──イ!!

A様お返事♪♪

A様♪ いつもありがとうございます♪♪

こんかいは読者の皆様を驚かせてしまった、成宮の変態ぶり(笑)
外見が良いだけに中身とのギャップがすごいことになってます。

A様の予想通り柔道部員も登場してきましたよ~♪
これから先、出番があるのか無いのか……新作のプロットが出来上がる時期にもよりますな(;^ω^)

そしてA様!! 
今回もするどい!!Σ(゚Д゚ノ)ノオオォッ
もう代わりに執筆をお任せしたいくらいですヾ(=д= ;)ォィォィ
次回は、あいつが……。

成宮の誕生日、どうなるのか楽しみですね~゚+。ゥフフ(o-艸-o)ゥフフ。+゚

個人的な理由で一週間更新が遅れてしまいますが、また楽しんで頂ければうれしいです(〃▽〃)ポ
またお待ちしておりますね~゚+。゚ アリガ㌧ ゚。+゚d(`・Д・´d)
βуё★ (o'ω'o)ノ ★ βуё

けいったん様お返事♪

けいったん様♪ いつもありがとうございます♪♪

(ΦωΦ)フフフ・・今回は変態丸出しの成宮でしたね♪
私もどうしようかな~と思いつつ書いちゃいました(´>∀<`)ゝ))エヘヘ

いやもう逆に現実とのギャップが可哀想な彼ですが、次回からも苦労が続きそうです(;^ω^)
ホント、あの夢が夢じゃなかったと知ったらどうなるやら……。

これから成宮の変態的妄想は解消されるのか! それとも本物の変態になっちゃうか!?
その辺にも注目して楽しんで頂ければと思います(笑)

更新が一週遅れますが、またお待ちしております!!
ありがとうございました~゚+。゚ アリガ㌧ ゚。+゚d(`・Д・´d)

limeさんお返事♪♪

limeさん♪ いつもありがとうございます♪♪

作者の性格のせいか、小悪魔シノや変態成宮のことを書くのが案外楽しいんですよね(笑)
祐も何だかんだで、性格はあまり良くないし。登場する犬も正確が悪いし……。
ピュア感がほしーーーーい。・゚・(ノД`)・゚・。と思ったら、RIKUを読みに行ったりしてますよ、私は。ナンデヤ( `д´⊂彡☆))Д´)ネン!

そうですね、どちらかというとこの後ちょっとシビアになる……と思います(;^ω^)
あ、誰かが死ぬとかはありません( ´_ゝ`)ハイハイ
一週間遅れてしまいますが、また読みに来ていただけると嬉しいです(〃▽〃)ポッ

あ、あ! そうなんですよ~「こける」は標準語じゃない、らしいんです! あくまで16調べですが。
方言かどうか……難しいですよね……(-´ω`-)シュン

またブログにもお邪魔させて下さいね~βуё★ (o'ω'o)ノ ★ βуё

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No title

もっと進んだ深い関係--✖→明るい場所で 裸--✖→お触り禁止--✖→色んな角度から写真--✖→暗い場所で お触り--.✖→。o 0--✖→。o 0--✖→∞--
何なの!その限りなく続く妄想はーー!(`OωO´#)
妄想オタクな私も 負けるわぁ~(∩_∩;)P 白旗~!

成宮、ヤバイよ~片思いが 長すぎて 変態度が すこぶる 強くなってるよ~ε-(゚д゚`;)フゥ..

こんなド変態100%成宮に 裕は、「恋人が嫌われ者じゃ、嫌だろ」だってだって もう なんて 可愛い事を 言っちゃうのーー(p*・ω・`*q) きゃぁッ♪

裕を どこぞの深窓のお嬢様?化している成宮く~ん♪
夢で 裕と あ~んな事や こ~んな事をしたのが ある意味 夢でないと 知ったら (。→ˇ艸←)プククッ☆
あぁ~ 教えて あげた~いな♪
しゃべるなッ! (ノ▼ー▼(; ̄X )ゝゲッ、16様っ!もごもご...byebye☆

P.S. 「こける」・・・関西人の私には 答えられません!残念~。゚(゚*ω⊂ グスン




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